元・甘酒専門店の店長という、ご経歴もお持ちの高瀬さんには、今後、企画・編集にて、「発酵じかん。」のサポートをしていただきます。新潟について、色々、お話をお聞きしました。
きっかけは、『るろうに剣心』
以前から、新潟に興味があり、何回か来県されたと、お聞きしました。
高瀬 はい。2016年に遡ります。小学生の頃から、『るろうに剣心』という漫画が大好きで、その原画展が開催されるというので、長岡市(旧越路町)の長谷川邸を訪れました。
長谷川邸は、国指定重要文化財ですよね?
高瀬 原作者、和月伸広先生は長岡市(旧越路町)のお生まれで、「長谷川邸三百年祭」の一環で、地元の方々から、打診があったそうです。
東京からですと率直に、移動が大変じゃなかったですか?
高瀬 全然! ファンの熱量を見くびらないで下さい(笑)。友人と塚山駅で降り、徒歩で行きました。会期中は何回も行きました!
そこまでとは!
高瀬 原画展の開催は8月でしたが、その前の6月にも関連イベントがあり、そこも参加しました。その時に長谷川邸の当時の職員さんや地元の方と、顔なじみになり、色んな情報を教えてもらったり、後日、片貝の花火や、越路の紅葉まつりに参加したり、良い思い出です。
そういえば、『るろうに剣心』の登場人物は新潟の地名が多いですよね?
高瀬 はい。旧越路町の地名はもちろん、「弥彦」「巻」「新津」「三条燕」とかですね。まだまだあります。もちろんそういった所は、ゆかりの地になるので、行きましたよ。電車で(笑)。
高瀬さんの『るろうに剣心』に対する熱量が伝わってきました(笑)。
高瀬 まだまだです(笑)。でも、そういった旅の途中で出会える風景も印象的でした。日本一の米どころと言われる越後平野の広大な風景に癒されたり、私は生まれが栃木県なので、海が見えると嬉しくなります(笑)。弥彦山の山頂は越後平野と日本海の両方が一望できるので、好きな場所の一つです。
新潟の自然に関する話題が出たので、『るろうに剣心』から話題を変えて(笑)。高瀬さんには、今回、「発酵じかん。」に関わっていただくに当たり、夏から秋、冬と新潟県内を巡っていただきました。どうでしたか?
高瀬 夏は暑いし、冬は寒い(笑)。ていうか、そうだからこそ、他の場所より季節の移ろいをより感じとれるのでしょうね。秋に訪れた村上では、山々の紅葉の繊細な色彩が美しかったことを良く覚えています。一方で、冬に来たら、真っ白で。水墨画の世界。あと、山と海の距離も近く、移動の度に変る景色が面白かったです。
縄文土器、城址、古い建造物、民族の歴史や文化的なものに関しても深い興味を示されていました。
高瀬 もともと、小学生の頃から、日本の歴史や文化に、興味を持っていました。最初に興味を持ったのは弥生時代で、そこから色々、日本の歴史や文化を知りたくなって(笑)。ちなみに、当時、好きなテレビ番組はNHKの『お江戸でござる』でした。高校では選択授業に「陶芸」があって選択していましたし、大学では「日本服装史」を専攻していました。
なるほどです。なんか自分の興味と学問が直結していたのですね! ちなみに「日本服装史」とは?
高瀬 文字通り、日本の服装文化を縄文時代から現代まで、装飾も含めて、当時の文献や絵画などから紐解いていく史学です。伝統的な和装はもちろん、武家の甲冑や明治から大正・昭和にかけてのファッション文化変遷の探究など、面白い分野でした。新潟県の関連でいうと、蕗谷虹児(ふきやこうじ)のような抒情画の世界観や当時の雑誌広告の挿絵とか、その辺も学んでいました。当時はインスタもSNSも、カラーの画像もありませんから、ファッション文化の画像的な発信は雑誌の挿絵だったりするわけです。ちなみに卒論のテーマは浮世絵でした。
高瀬さんの日本文化に対する憧憬の根源や甘酒専門店にお勤めの前に、着物専門店にお勤めだったことが、理解できました。
高瀬 着物専門店では和雑貨販売部門に配属になりましたが、着物への関心はずっと持っていて、知り合いに結城紬の関係者もいて、今でも連絡をとったりしています。新潟でも塩沢、十日町、小千谷と訪れましたが、それぞれ興味深かったです。作業工程の中に「雪晒し」があるのも、新潟ならではですね。塩沢では織物の体験もしました。
ほっておくと、いつまでも織っていそうな勢いでした(笑)。
高瀬 改めて思いましたが、昔の人の創造力というのは、別の意味で凄かったと思いますね。デジカメもパソコンもなく、デザインのソフトもない時代に複雑な文様を手織物で表現したりしている訳です。創造から再現の力量が凄い。
わかります、わかります。自分も西陣織物の会社にいたことがあったので、最初は何で織物でこんなデザインができあがるか理解不能でした(笑)。
高瀬 火焔型土器とかもそうですよね。古代の人々がどんなパッションやインスピレーションで、あんな風なデザインのものを作り上げたか聞いてみたいですよね。恐らく、現代人より五感が研ぎ澄まされていたんでしょうね。なんだか、そう考えると新潟県には古来より人々が紡いできた歴史や独自の文化がたくさんありますよね。
そうなんです。新潟県には人や自然、風土、歴史が織りなす独自の文化があり、それは現代のライフスタイルにとっても参考になるものが多いと感じています。
高瀬 そういう所が新潟県の興味い所です。私的にも、さっき言った、子供の頃から興味を持っていたものや、学生時代に学んでいたことが、新潟県に存在しているものと深く繋がるんですよね。あと、食べ物も美味しいし、発酵や醸造を生業にしている企業も多く、独自の工芸産業もある。面白いものばかりです。
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PROFILE
高瀬真由美さん
栃木県生まれ。着物専門店にて和雑貨販売担当、甘酒専門店にて店長を歴任。日本発酵文化協会認定発酵マイスター。「発酵じかん。」に企画・編集として参加。