前回に引き続き、「発酵じかん。」に企画・編集で、ご参加いただく、発酵マイスターの資格もお持ちの、高瀬真由美さんに、お話を伺います。(前回記事を見る――「私が新潟に興味を持った理由」 発酵マイスター・高瀬真由美さん①)
高瀬さんは、現在、日本発酵文化協会認定の「発酵マイスター」という資格をお持ちです。甘酒専門店にお勤めの時に取得されたのですよね?
高瀬 そうです。やはり、お客様に商品をご説明するために、専門的な知識を身につける必要がありましたので。その前にも、京都の「菱六」さんという老舗のもやし屋(種麹屋)に研修にいかせていただいたりしました。
実際に現場で作業されたのですね。いかがでしたか?
高瀬 あれはもう理系の世界でしたね(笑)。貴重な体験でした。
ご承知の通り、新潟県も発酵や醸造が盛んなところです。
高瀬 そうですね。新潟県の甘酒もよく販売していました。日本酒と同じで、新潟のお米とお水で作られているので、人気がありました。甘酒は近年のメディアの取り上げ方で、健康志向な飲料として認知されている側面もあったので、毎日、飲み続けることのできるような飲み口の良い甘酒は人気がありましたね。甘酒の成分が疲労回復や腸内環境の改善を手助けするとか、言われていますね。
今回は、長岡市の摂田屋地区をご覧になっていただきました。
高瀬 建物も含め歴史が感じられて良かったです。前に行った新発田でもそうでしたが、やっぱり新潟県は歴史のある酒蔵が多いですね。日本酒に関してはこれから勉強していきたい分野になりますので、これを機会に様々な酒蔵を訪ねてみたいです。あと、「星六」さんのお味噌も良かったです。昔ながらの木桶で二年間熟成されたものを今回購入しましたが、滋味深い優しい甘みも感じられ、とても美味しかったです。やっぱり、自然の摂理に従い、必要な時間をかけて作ったものは一味違いますよね。
話は少しそれますが、このご時世で、不謹慎かもしれませんが、やはり訪れた場所でしか得ることのできない、発見であったり、モノであったり、空気感みたいなものって、ありますよね。
高瀬 特にこういう、地方の蔵を巡っているとそうですよね。新しい発見があります。星六さんの味噌や吉乃川さんで購入した「煎り酒」もそうです。
そういった意味では、その次に移動して見てもらった新潟市西蒲区角田浜のワイナリーでも高瀬さん的、出会いがありました(笑)。
高瀬 はい。「ルサンク」というワイナリーです。私は宝塚歌劇も大好きなのですが、各公演ごとに発刊されるステージ写真集の名称が『ル・サンク』なのです。最初は単に名称が同じだけかと思ったのですが、店頭のPOPを読んでいたら、実際に宝塚歌劇の公演ドリンクにも採用されていたことを知って一気にテンションがあがりました! 実はワイナリーという所には訪れたことはなかったのですが、最初に訪れたワイナリーで偶然、自分の大好きなものとゆかりがあるものに出会えて、とても嬉しく思いました。
実際に購入されていましたね。そもそも、新潟にきていただいた時、結構、色んなものを購入されていますよね(笑)。
高瀬 私は新潟贔屓ですので(笑)。というより新潟の食べ物は美味しいものがたくさんありますよね。夏に来た時には枝豆や茄子、神楽南蛮なんかを購入して帰りました。枝豆は黒崎茶豆もそうですが、弥彦のものも、美味しいですよね。なんか弥彦の産直売場で枝豆を選んでいたら、偶然、生産者の方が「これは家が作ったから、うまいよ!」とか言われて(笑)。実際に美味しかったですけど(笑)。言うまでもなくお魚もそうですよね。佐渡の寒ブリや南蛮海老など、とても魅力的な食材ですし、新潟のお刺身はちょっと他とは違う感じがします。鮭の塩引きも、秋に村上の旅館の朝食で出していただいたのですが、コシヒカリとの相性も抜群で、朝からご飯を食べすぎました。
唐突ですが、工芸品関連の方も聞いていいでしょうか?阿賀野市の庵地焼はいかがでしたか?
高瀬 前にも言った通り、陶芸に関しては、高校時代も授業で選択していましたし、社会人になってからも和雑貨販売を担当していたので、深い関心を持っていましたが、新潟の陶芸に関しては、認識がありませんでした。
なかなか個性的な窯だったような気がします。
高瀬 そうですね。三姉妹で家業を継いでおられて、土づくりも、一から作っていますし、轆轤(ろくろ)も「蹴り轆轤」という、足で蹴って回す、現代では珍しいものです。出来上がった製品も、重厚感のある、黒の釉薬が印象的でした。実際に全体的に厚めの焼き物なのですが、その分、長く使ってほしいという作り手の意図がひしひしと伝わってきました。民藝的でもあり工芸的でもあり、デザインと機能、両方を兼ね備えていると思います。訪れた時は、時間がなかったのですが、「登り窯」も拝見したかったです。
なんでしょうね。星六さんの木桶二年熟成の味噌も、庵地焼そうなのですが、しっかり妥協せず「人の手」で時間をかけて作り上げるという、想いや念みたいなものが伝わってきますよね。
高瀬 そうですね。それは、燕の鎚起銅器にも感じますよね。金鎚とか木槌等のシンプルな道具立てで、あれだけ美しく実用的な製品を作り上げる職人さんは本当に凄いと思います。
燕三条といえば、そういった伝統工芸品もありつつ、近代的な工業製品も発展してますよね。
近年はオープンファクトリーを実施している企業も多いです。だたなんでしょう、工業製品とは言え、重要な工程にはちゃんと人が作業している所、例えば「磨く」とか「削る」とか人の技術が垣間見える工場とかはすごく興味を持たれている感じがしますね。
高瀬 結局、一つの製品のバックボーンというか、歴史も含めて、その製品を作り上げるまでの人の営みという所が一番興味深い所ですよね。
高瀬さんには、まだまだご紹介していない新潟県がありますので、今後とも宜しくお願いいたします。より一層、新潟県を好きになっていただければと思います。
高瀬 ありがとうございます。本当に新潟県には興味深い所がたくさんあると感じています。伝統的なもの。あるいは、例えば、阿賀野市で「新潟てぬぐい」を製造・販売している藤岡染工場さんのように、伝統を活かして新しく変化していくもの。両方が躍動感を持って存在しています。今後とも、より新潟県の知識を深め発信していきたいと思います。宜しくお願いいたします。
PROFILE
高瀬真由美さん
栃木県生まれ。着物専門店にて和雑貨販売担当、甘酒専門店にて店長を歴任。日本発酵文化協会認定発酵マイスター。「発酵じかん。」に企画・編集として参加。