紐解く

早春の風景

雪解け前、加茂川の畔にて。

2022313

ネコヤナギ

 雪解け前の川の畔で、ネコヤナギに出会う。実は、ここ数日、探していた。なんのことはない、きちんとネコヤナギについて、調べていればすぐに見つけることができたのだが、子供の頃の大雑把な記憶だけに執着してしまったため、見つけることができずにいた。

 

 四十年前の記憶。

 

 その頃の私には、毎年、春になると大きな楽しみがあった。「イトヨ釣り」である。イトヨは、トゲウオ目トゲウオ科の魚で背びれと腹びれに棘を持つ、体長10センチ程の魚で、春になると産卵のために河川に遡上してくるのだ。

 毎年、行ったのは信濃川だ。当時、その場所は護岸整備がなされていなく、雪解けの増水時は、河川敷に数か所、小さな池や湾処を作っていた。そこにイトヨが流入してくるのである。

 

 言わば、春限定の小さな釣り場だ。春の陽ざしの中、友人達と自転車で出かけ、のんびりと池を囲み「イトヨ釣り」を楽しんだ。当時イトヨは、近所のスーパーマーケットでも販売していたので、新潟に春を告げる食材であり、「イトヨ釣り」や「イトヨ漁」は、新潟の風物詩であったように思う。

 

 話はネコヤナギに戻る。

 

 恐らく、そんな時にネコヤナギに初めて出会っていたのだと思う。あの「もこもこ」が付いている木は何だ?と、大人に聞いていたのだと思う。そして、その時の記憶で、「ネコヤナギは川に行けば、すぐ見つけることができる」と、大人になった私は、ただ漠然と探していたのである。しかも車で、川の土手から。

 

 遅ればせながら、調べて分かったこと。

 

 ネコヤナギは、どのヤナギ類より水際に生えること。確かにその通りだった。今回は、川沿いに歩いて、橋の上から見つけることができた。昨日までは、子供の頃のように歩いて何かを探したり、感性を磨くことを怠ってしまっていた。ということだ。

 

 そして、もう一つ「イトヨ」のこと。

 

 やはり、新潟県では、河川改修や、ほ場整備により、現在は、その数が激減しているとのことで、私が子供の頃のように、気軽に釣ることができる魚では無くなっているように思う。残念なことではあるが、記憶の中に、当時の「イトヨ釣り」の情景が残っていることを大切に想いたい。

ネコヤナギ