暮らすスローな暮らし

山里の小さなパン屋と名水に出会う

KITANAKA factory

2026年9月22日

国道7号線を鶴岡方面に向かうと見えてくる「パン屋」の、のぼりがお店の目印・農道を徒歩30秒で到着

村上市北中(旧山北町)

KITANAKA factoryという所

 わざわざ訪れたい所がある。(筆者の生活圏から見た話です。)休日に、車を走らせ目的地に向かう。

 最寄りの日本海東北自動車道「朝日まほろば」インターを降りて、さらに国道7号線を鶴岡方面に約20㎞。すると、右側におもむろに「パン屋」の、のぼりがはためく。

 新潟県村上市北中。

 旧岩船郡山北町であったこの地は、新潟県最北部の「町」として、2008年まで存在していた。町の面積の93%が森林。「笹川流れ」で有名な海岸部も有している。そんな自然豊かな山里にある「KITANAKA factory」が今日の目的地だ。

 とわいえ、まだ店には到着していない。のぼりのある「北中集落センター」に車を止め、農道を徒歩30秒で到着する。僅かな時間であるが、水路や野の花、畑を眺めながら歩くのが癒しの時間だ。

パンとお菓子と野草茶のお店「KITANAKA factory」

KITANAKA factoryに入店し右側の素敵な異空間

店内は山里のお店とは思えない

素敵な異空間

 店内に入ると素敵な戸惑いが訪れる。失礼を承知で表現すると、およそ小さな山里には似つかわしくない、洗練された空間が目に入ってくる。

 聞くところによると店主のご実家で所有されていた築古物件をリノベーションされたとのこと。

 天井の梁や築古物件の面影を残しつつも、温かみのある木目調のインテリアやシックな色調で統一された店内。天井からは温かい光を放つ電球が下がり、壁際には、お酒のボトルや美しいグラスが並ぶ棚が設えられている。(※酒類は提供していません。)その手前にはカウンターも設置されていて、お洒落なBARにでも訪れた気分になる。
 「この場所で起きる化学変化を楽しみたい」と、単なるパン屋ではなく、それ以上の価値をこの場所で育んで行きたい店主の想いが伝わってくる。

焼きあがったパンが次々と運ばれる・たくさんの種類のパンがお客様を喜ばせる

パン売場は見ているだけでも

何だか幸せを感じるパンが満載

 店主の吉田美香さんは、在京の専門学校で製菓を学び、都内の製菓店やカフェ、結婚式場などでパティシエとして腕を磨いてきた。転機となったのは、関川村への移住。地域おこし協力隊として村の歴史的建造物「東桂苑」で、持ち前の技術を活かして魅力的なメニューや村特産品の開発に携わる。そんな中で、2023年(令和五年)、村の明治期の医院跡(旧齋藤医院)に待望の「ぽっかりパン」をオープン。10年以上パン屋がなかった関川村に、大きな話題を呼んだ。

 そして、吉田さんが故郷の村上市北中に戻り2024年(令和六年)に立ち上げ、その後、現在の店舗で営業しているのが「KITANAKA factory」だ。国産小麦や地元食材も交え、「暮らしに寄り添うパンとお菓子」というコンセプトの下、自分が納得できる素材を選び、なるべく体に負担のないパンをお届けすることを使命に、お客様をお迎えしている。

開店をめがけてお客様が訪れ、すぐに笑顔溢れる空間になるKITANAKA factoryの日常

お菓子や野草茶

パンの他にも魅力的なラインナップが揃う

 パティシエに自身のキャリアのルーツ持つ店主の吉田さん。お菓子のラインナップも豊富に品ぞろえる。

 入口正面のショーケースには、

  • 本日のとろけるフルーツプリン
  • 本格ティラミス
  • 抹茶シフォンケーキ
  • 秋の果実フルーツタルト

※取り扱いは日々変化します。

 などが、美しく並べられ、焼き菓子も

・チョコレートフィナンシェ
・抹茶のマドレーヌ
・笹川流れ玉藻塩の塩バターサブレ
・国産小麦のビスコッティ

 など、魅力的なものばかり。

 また、「KITANAKA factory」オリジナルブレンドの野草茶も好評な一品だ。

 近隣の村上市大毎地区にて手摘みされた「山ぶどう」「野葡萄」「よもぎ」「どくだみ」「ミント」「山椒」等を自然乾燥した、山里の豊かな植物の生命力と情緒をそのまま閉じ込めたような、体に優しく、心までじんわりと解きほぐしてくれるような深い味わいで、まさに日々の暮らしに寄り添ってくれる「野草茶」になっている。

焼き菓子も人気の高い商品

地元「笹川流れの玉藻塩」使用のバターサブレ

KITANAKA factoryオリジナルブレンド野草茶「風」「月」「恵」

近隣の「大毎めぐみ工房」と共同開発

新潟県村上市大毎地区の風景

せっかくなので「野草茶」のふるさと

村上市大毎地区に立ち寄る

 「KITANAKA factory」がある村上市北中地区から約1㎞の位置にあるのが大毎地区だ。前出の「野草茶」のふるさとになる。この大毎地区の歴史は古く、江戸時代に整備された、越後(村上城下)と出羽(鶴岡城下)を結ぶ重要な幹線道路「出羽(庄内)街道」において、「大毎宿」という宿場町として町割りされた。

 そして、この場所は「名水の里」として知られている。「吉祥(きちじょう)清水」と称され、吉祥岳からの伏流水を1924年(大正十三年)に約900mの導水路を整備して集落内に引き込んだのが始まりとされている。現在でも飲料水や生活水として、この地区の人々の生活を潤している。また、2008年(平成二十年)には環境省により「平成の名水百選」に認定され、「日本国」という地酒の仕込み水にも利用されている。

 車を止めてゆっくりと歩いてみる。さらさらと澄んだ音を立てて流れる川、そして優しくカーブを描く坂道沿いに佇む木造の古い家々。静かな山あいに広がる街並みには、旅人が行き交い賑わっていた往事の面影と、100年近くにわたり水と共に生きてきた人々のぬくもりが、いまも息づくように色濃く残っている。
 

大毎名水「吉祥清水」

暮らしのじかんが、愛おしくなる

ほんの少しのひと手間

 今回、「KITANAKA factory」で購入したパンとお菓子、野草茶。大毎地区の「吉祥清水」で汲んだ水。わざわざ出かけて手に入れたものは、せっかくなので小さな手間をかけて暮らしの中で愉しみたい。

 普段、お茶といえば電気ポットで湯を沸かしているが、今回は鉄瓶で湯を沸かしてみる。そんなひと手間を掛けて沸かした名水のお湯で野草茶を入れる。

 「笹川流れ玉藻塩の塩バターサブレ」「本日のとろけるフルーツプリン」と共に過ごすティータイムは、今日という一日を静かに振り返る愛おしい時間となった。

 明日の朝は、今日早起きした分、少し寝坊をしようと思っている。目が覚めたらのんびりと「KITANAKA factory」のパンを楽しむ、そんなスローな一日を考えている。

国産小麦製「食パン」

切る厚さを変えて違う食味や食感を楽しむ

翌朝の遅い朝食

燻製オリーブオイルで食する

INFORMATION

KITANAKA factory

 

住所/新潟県村上市北中795

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