紐解く

春の苦味

雪解けの頃、
加茂市水源地にて。

2022331

ふきのとう

 新潟の雪解け。

 春の陽ざしが地面を照らし、雪解けが進むと、いつの間にかフキノトウが出ていることに気づく。

 というのは、正確な表現ではなくて、彼らは、しっかりと雪の下で小さな頭(蕾)を出して、潜んでいるのである。そんなことを言うと、雪国の人間はすっかりシンパシーを覚え「雪の下で、ジッと春が来るまで堪えて、なんて健気な姿」と、思ってしまうのだが、それは分からなくもない。

 

 まぁ、正直に言ってしまうと「暮らしの中の雪」は、なかなか疲れる。

 

 かくなる自分も新潟県でも有数の豪雪地帯にある企業に勤務していたが、雪が降り続くと、除雪が毎朝の業務になる。そして、屋根に雪が高々と降り積もると、とうとう雪下ろしが始まる。一日中、会社の屋根の上で過ごしたこともあった。生粋の新潟県民だが、人生初、本格的フルコースの除雪作業を経験した。

 

 まぁ、自分の愚痴めいた話題はこれくらいにして本題に入る。

 

 フキノトウと言えば、独特の風味と苦味がある、春の代表的な山菜であるが、子供の頃は、全く食べることができなかった。ところが、歳を重ね四十代の後半に差し掛かった頃から、「春の苦味」を好んで食べるようになっていた。

 聞くところによると、人間をはじめ動物が、冬のカラダから春のカラダへ変化させる時に手助けになるのが「苦味」のある食材なのだそうだ。越冬のために、ため込んだ脂肪や老廃物の排出を促す効果があるらしい。考えてみると、春の山菜というのは、ほぼ当てはまるのではないだろうか。

 

 あぁ、なるほど。

 大人になって、フキノトウを好んで食べ始めたのは、体内に、排出しなければいけないものをため込んでいたからこその、自然現象なのだろうか。

 

 新潟の雪解け。

 春の大地が沢山の恵みを私たちに届けてくれます。フキノトウをはじめ、コゴミ、タラの芽、コシアブラ、ウド、ウルイなど、新潟の長い冬を乗り越えた力強さを兼ね備えた山菜で溢れます。今年もそんな「春の苦味」をいただける、小さな幸せをしみじみと感じたいと思います。

 

 

雪解け